インタビュー

坂本咲子さん

オフィスサッキー代表

共立女子大学卒業後、昭和61年に札幌テレビ放送入社。TV「朝6生ワイド」メインキャスターやラジオ「坂本咲子のアタックヤング」 メインパーソナリティーなどを務め、当時のラジオ専門誌で女子アナランキング年間1位を獲得。平成7年3月に退職後は東京でフリーとなり、数々の人気番組を担当。アナウンサーとしてだけでなく、構成作家としても活動中。現在はオフィスサッキー代表としてアナウンサーのマネジメント、育成にも携わっている。

TBSラジオ(全国ネット)「荒川強啓デイキャッチ」アシスタント(月〜金 15:30〜17:50)として出演中。

※上記プロフィールは取材当時のものです。

Interview vol.21 坂本咲子さん

札幌テレビアナウンサー

フリーアナウンサーが試されているのは、「アナウンススキル」ではなくその人の「総合力」。読めるだけのアナウンサーは勝負できない。

札幌テレビ在局当時から人気アナウンサーとして活躍。その後フリーとして、TBSラジオ「荒川強啓デイキャッチ」(月〜金 15:30〜17:50)をアシスタントとして7年間支えてこられた坂本咲子さん。今後はアナウンサーのマネジメント・育成にも一層力を入れていきたいという坂本さんに、「これからの放送現場から求められるフリーアナウンサー像」についてお話を伺いました。

Q1.フリーアナウンサーをマネジメントされていて思うことは?

フリーアナウンサーの多くは、意外と「自分の視点を持っていない」と思います。例えばオーディションで、「スーパーで買い物をする時はどこに注目していますか?」と聞かれたとすると、「価格」「鮮度」「産地」などの答えがあり、その視点へのこだわりについて話が転がっていくのが良い流れなのですが、「ええ、なんとなくその日の献立を考えながら、売り場を歩いています」などと、「庶民的な奥さんの目線ってこんなんでしょ」みたいな答え方をしてしまう。
また、「最近は花粉がつらいですよね。皆さんはいかがですか?」などと「みんながそういってるからそうなんだろう」「そのほうがウケがいい」などと楽な方向に逃げ込んでしまいがちですよね。

Q2.それだとオーディションで一歩上を行くことができないのでは?

そうですね。みんなと同じ考えのレベルでは、オーディションで選ばれない。一言のコメントにも、あらゆるバリエーションを考えるなど、自分にどんどん課題を与えていかないと。楽をしようと思うといくらでも楽できますからね。
オーディションでは自分をアピールすることにだけ集中していればいいんです。他人を意識しすぎてもいいことはありません。オーディションで人より上に行くことって、「他人を蹴落とすこと」では決してない。

私が東京で初めて受けた、JFNのオーディションの時のこと。結局落ちたんですがプロデューサーに「私のどこがダメだったのか教えてください」って尋ねたんです。すると「あなた9年も局アナやってて、ダメなところなんてあるわけないでしょう!」って。その時に受かった方は中村こずえさんだったのですが、「こずえが良かったからこずえにしただけ。別にあなたがダメだったわけじゃない」と言われて。その番組では「こずえさんが欲しい」から採用したのであって、他と比較してどうというわけではなかったということです。

私の場合そこで終わらずに、「こずえさんのどこがよかったんだろう」とスタジオに何度か見学に行ったんです。するとスタッフの方たちから意欲を買われて夏休みの代打を任されたり、他の仕事をいただいたりして。「勉強させていただきたい」という気持ちがあれば、そういった行動も許されるのでは?と思いますね。

Q3.オーディションだけがチャンスの全てではないということですね。

オーディションはある意味「ご縁」ですけど、その後仕事が続くかどうかは、スタッフやスポンサーとの信頼関係。それなのに何事も「事務所を通してもらわないと」と普段のコミュニケーションを拒むのはもったいないですね。古い考え方かもしれないけど、スタッフと食事に行ったりお茶を飲んだりするのは大事。変に「接待」を考えず、人間同士の付き合いだと思って。1対1が不安なら誰か連れて行ったり、マネージャーに報告だけしておくなど、そういうときに事務所を利用すればいいんです。事務所っていうのは、現場でもめないために使うもの。「ギャラの話は社長にしてください!」とかね(笑)。

Q4.事務所の社長として、これから欲しいアナウンサー人材とは?

やりたいことがたくさんあって、それを形にしたいと思っている人がいいですね。「来る仕事は何でもやります!」という人はいらない。例えばFP=ファイナンシャルプランナーの資格を持っている人はたくさんいるんですが、じゃあFPとして何がやりたいの?って言ったときに「家計についてのコラムを女性週刊誌に書きたい」とか「デパートのカルチャースクールで奥様を集めてイベントやりたい」とか具体的な企画が出てくるかどうか。「いちおう試験には受かったんですが・・・」という人はいくらでもいるから、そのレベルでしか競争できない。放送現場からは「台本書けますか?」「コーディネーターや取材の役目も可能ですか?」というニーズも増えてきています。こうなるとアナウンススキルだけでの勝負ではないですよね。

ただ「ニュースが読めます」という人はいらない。今は、ゲストを連れてくる、スポンサーを連れてくる、という人脈を持っていることも大事です。これは日々のコミュニケーションという努力が必要。何事も「事務所が何もしてくれない」って、面倒くさがって自分で行動していない人は、何も変わりませんよ。

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自分は他人とどこが違って、どこで勝負していくのかを見極めて上手にアピールしていく。それがオーディションでは大事な戦略なんですね。
アナウンサーの「個性」って」何なのか。もう一度考えてみる必要がありそうです。

坂本さん、貴重なお話ありがとうございました!!

(2009/02 東京・赤坂TBSにて)

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