インタビュー

滝内泉さん

上智大学大学院理工学研究科卒業後、日本放送協会(NHK)にアナウンサーとして入局。盛岡放送局を経て、東京アナウンス室に配属。「おはよう日本」の報道リポーター、NHK初のハイビジョン番組のキャスター等を担当。1998年にNHKを退社。劇団四季「ライオンキング・東京公演」「美女と野獣・北京公演」の制作に携わる。 その後フリーランスでNHKの宇宙特集番組やオーロラ特集番組のプロデュースなどを行い、2001年にソニー株式会社に入社。So-netで、ブロードバンドシアタープロジェクトなどをプロデュースしている。

※上記プロフィールは取材当時のものです。

Interview vol.14 滝内泉さん

NHKアナウンサー

自分のプレゼンは、ズバッと一言で。それを言い続けることによって、覚悟、人脈、チャンスにつながる。

今回のインタビューは現在ソニーでプロデューサーをやってらっしゃる滝内泉さん。アナウンサーという職から離れてわかったアナウンサーの世間での立場や、人脈の大切さ、作り方について話していただきました。

Q1.アナウンサーになったきっかけを教えて下さい。

NHKアナウンサーとして活躍された滝内さんですが、もともとアナウンサー志望だったのですか?

そもそも私は理系の大学院出身で、子供の科学番組を作りたくてテレビ局に就職を希望しました。ディレクター志望だったんですが、NHKにアナウンサーとして採用されました。当時のNHKは、アナウンサーはしゃべるだけじゃなくて、取材や番組制作もできないといけないという風潮で、ふりだしの盛岡放送局時代から、いろいろと番組を作らせてもらえました。その後東京のアナウンス室に配属になったのですが、地方局と違って、アナウンサー、記者やディレクターの役割がはっきりしてるんですね。取材するぐらいなら、きちんと間違えないで読め、って言われました(笑)。

Q2.転職を決意したきっかけを教えて下さい。

憧れる人も多いNHKアナウンサー。辞めることに迷いはありませんでしたか?また、辞めた後の生活について教えてください。

『子供のエンターテイメントを作りたい』っていうのが私のテーマだし、アナウンサーという手段を辞めることには何の未練も無かったので、転職活動を始めました。

アナウンサーからの転職活動って大変でしたよ。自分では、アナウンスだけでなく、原稿も書けるし、取材や編集も出来るから、どこかには就職できるだろうと思っていたんですよね。しかし、世間では「アナウンサー」という枠組みでしか私を見てくれないし、アナウンサーという肩書きがいかに通用しないかっていうことがよくわかりました。企業って、一般的には「歯車」が欲しいんですよ、営業が弱いから営業を取ろうとか。でもアナウンサーっていう「歯車」がない企業にとっては、当然いつまでも必要がない。

一般企業に就職するには、まず、アナウンサーのスキルの中で、世の中の役に立つ要素が何なのかをきちんと捉え、さらにそれが企業のどういったポジションで生かせるのかを具体的に考えていく必要があります。またアナウンサーの転職って、アナウンサーという経験を面白がってくれるキーマンがいないと難しいんじゃないかと思いますね。私の場合は、運よくそういったキーマンに出会いました。子供のエンターテイメントをつくりたい、という夢を語ったら、「じゃ、うちはぴったりだ」と面白がって頂き、劇団四季にお世話になることになりました。

Q3.転職後の生活について教えてください。

劇団四季に入って配属されたのは国際部。「ライオンキング」の制作に携わりました。広報も担当しました。広報の仕事は、ある程度アナウンサーに通じるものがあります。アナウンサーや記者の経験があれば、「こういうことだったら、とりあげてくれるかも」と考えながらプレスリリースを書いたりすることができますよね。ニュースバリューを見極める力という意味で、アナウンサーの経験は、広報の仕事にとても役立ちました。

その後、ソニーに入ることになりますが、そのときも推薦してくれる人が、それまで培った人脈にいたんですね。 何でしょうね「人脈」って。振り返ってみると、自分の歩いてきた道にキーマンになってくれる人がいた。きっと誰の人生にもキーマンはいるし、人脈はあるものだと思いますが、じゃあ何が分かれ目かっていうと、「一生懸命さ」や「熱意」が有るか無いか、なのかな。あとは、自分のテーマがはっきりしていること。私だったら、『子供のためのエンターテイメントをやりたい』。 『あなたは何がやりたいの?』っていわれたときに、あれもやりたいこれもやりたいというと、印象が薄くなるんですよ。だから聞かれたときに、ズバッと一言で自分をプレゼンテーションすることは大切ですね。それは「覚悟」にもつながる。それを言い続けることによって、その人なりのユニークな人脈ができ、チャンスも生まれるんだと思いますよ。

Q4.元局アナネットについて・・・

私は、局アナをやめたのなら、得意分野を深めるために、アナウンサーを一回お休みするというのも手だと思います。もともとは、アナウンサーをやりたいんじゃなくて何かを伝えたくてアナウンサーになったはずで、その伝える手段は、アナウンサーという枠組みだけではないと思うんです。どんなビジネスが今、社会のトレンドで、そのビジネスだと自分のどんなところが生かせるかということを考えてチャレンジする。元局アナネットがそのチャレンジを、具体的にサジェスチョンできる存在だったらいいですね。期待しています。

(2005/09/20 東京・目黒にて)

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